焦点:迷走するWTOトップ選出、採決強行か米政権交代待ちか

ブリュッセル/ワシントン 29日 ロイター] - 世界貿易機関WTO)の次期事務局長選びが暗礁に乗り上げている。多数の加盟国が支持する候補者のナイジェリアのヌゴジ・オコンジョイウェアラ元財務相について、トランプ米政権が大統領選投票日を目前にした28日に、断固反対を表明。WTOに新たな「パンチ」を食らわせた。 これによりWTOは、採決に訴えて最大の資金拠出国である米国の意向を覆すか、大統領選で民主党のバイデン前副大統領が勝利して米国の態度が変わるのをじっと待つか、というどちらも苦々しい選択を迫られる形になった。 <早期決着は期待できず> オコンジョイウェアラ氏が選出されれば、初のアフリカ出身の事務局長が誕生する。同氏は米国籍も持っている。しかし米通商代表部(USTR)は、対立候補で韓国の兪明希・産業通商資源省通商交渉本部長の支持を明言し、国際貿易問題での経験が豊富な人物だと主張した。 ジュネーブのある外交官は、米国は事務局長候補を何とか一本化する最終盤になって兪氏の支持を打ち出し、議論の方向をめちゃくちゃにして、手続きの進行を妨害していると憤慨。「まるで行き当たりばったりで動いているようだ」とあきれかえった。 かつて米商務省高官だった戦略国際問題研究所(CSIS)のウィリアム・レインシュ氏は、米国を翻意させるため、舞台裏で相当激しい議論が行われるだろうと予想する。 ただトランプ大統領WTOを中国寄りの「とんでもない」組織だと批判し、脱退までちらつかせているだけに、新事務局長承認のために11月9日に開かれるWTO一般理事会までに米政府が渋々でも多数意見を受け入れるとは想定しづらい。